ぼくはいま地域医療研修中です。地域医療研修は僻地医療とかをおこなっているプログラムもありますが、千葉県内の内科診療所で“かかりつけ医”とはなにかを学んでいます。
11月はコロナワクチン接種を落ち着き、インフルエンザワクチン接種が開始され、主に高齢者や未就学児に対して注射を打っている毎日です。たまに往診、訪問診療に行ったり、外来をやったりしています。
毎回1日の復習を5時頃から行うんですが、その際に院長先生の熱いメッセージをいただいて終了しています。
ある日のまとめ時間で、院長先生から『外来で一人ひとりに対して聴診やってるけどあれ意味あると思う?』という問いかけがあった。ぼくもうっすらと疑問に思っていたことだったが蓋を閉じてしまっていたことだ。
そういや聴診器を肺炎を疑ったり、心音を聞いたり、お腹が動いているのかなどを確認するときにしか使わない。救急外来では一度も聴診器を当てない患者だって多くいる。確かに全員に聴診器を当てる意味は一見するとなさそうだ。
聴診はあまり効果がないということさえいつか聞いたことすらある。
いつからかぼくは聴診器を滅多に使わなくなってしまったな。。。
さかのぼること大学4年〜5年生
たしかぼくが患者に対して初めて聴診器を当てたのはポリクリ(病院実習)のときだろう。循環器内科に入院している患者でたしかMSの患者。拡張早期の弁開放音、低調な漸増漸減性の拡張期ランブルとかCBTのときに詰め込んだ知識を確認するかのごとく振り分けられた患者のもとに聴診しに行った。
恐る恐る聴診器を当てようとすると左胸に服の下になにか異物が。。。
ホルター心電図?
名前こそ聞いたことがあるが1日中ぶら下げているとしか知識がなかったので、『こ、これをどかしても良いですか?』とちょんちょんしながら、おずおずと70代後半女性に聞いた。『いやーこれおっぱいだよ』
衝撃が走った。それまで同期の男子、彼女としか聴診をしたことがなかったので垂乳根という存在を知らなかった。終わった。初日にやらかしてしまった。
その患者がいい人で事なきを得たが、臨床とは怖いとこだと思い知った病棟初日であった。その一見があったからか患者と打ち解け合うことができた。聴診には良くも悪くも患者と触れ合う最も最初のステップになりうることを知った。
エイブラハム・バルギーズ:医師の手が持つ力
話を戻すが、まとめの時間にこの動画を勧められた。
聴診は患者と医師を繋ぐ儀式なのだと。最近の医療は検査ありきで、採血データ、画像データを画像上でにらめっこ。不可欠な要素の患者自身が抜け落ちているような気がします。患者にとってみたらこのデータはよくわからない医学に過ぎないんですね。それよりも聴診とか診察をすることで患者は医師に対して畏敬の念を懐き始めるのかも知れません。
たしかに、かかりつけ医ともなると、医学的に答えのない問題に突き進むことが多い。地域にずっといる患者を患者となる前から予防医学などを行ったりして付き合っていく必要がある。症状が明確にあって治療する場合もあるだろうが、現状維持するために定期フォローされていたり、なんかいつもより変という患者もきたりする。
この場合に必要になってくるのが患者と医師の信頼関係である。当ブログでも何回か取り上げたが、信頼とはその人自身を信じることである。データがこうだからとかではなく、この人がこういっているから信じるということである。
たしかにプラセボ効果とういうのがあるが、40%くらい症状緩和の効果があるそうだ。痛み止めを使わずとも痛みの40%くらい改善が見込まれるとは結構な効果だ。いかに診察を行うことで患者との信頼関係が気づくことが大切かがわかる。プラスして自分の行おうとしている治療にもついてきてくれるなら、効果は倍増である。
口が上手い人が患者に信頼されるとばかり思っていたが、聴診などの儀式を行うだけも効果ができるならば口下手な僕でもトライする価値はありそうだ。
毎日ワクチンを数十人単位でやっているので形骸化しがちであった。しかし、外来上達のヒントはワクチンを打つとき一つとってみても落ちている。
昔発熱で寝込んでいたときに親が僕の額に手を当ててくれた。これだけでも結構苦しさが改善したことを覚えている。ワクチンでなきやまない子供に対してそっと手当てしてあげるだけでも効果があるかも知れない。手当てがいつしか検査とか処置に変わってしまっていた。ここで本来の手当とは何かを考え直したい。
来年から整形外科に入局します
今月から専攻医登録応募が開始されました。
僕は整形外科に応募しました。
整形外科の外来ではたぶん聴診器は使うことはないでしょう。整形外科の外来診療では必ず触ることが大切かと思います。僕の研修病院では夜の10時まで外来をやっている人気の先生がいますが、その先生も必ずその患者に対しても体を動かすなどの診察を行っています。大病院でできる範囲、かかりつけ医でできる範囲にはそれぞれ守備範囲が違いそうですが、このことを忘れずに診療を進めていこうと思います。
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